メニュー

夜にトイレで起きる

泌尿器科を受診される患者さんにとても多い症状の一つで、その原因をしっかりと見極め、適切な治療を行うことで多くの方に改善が見込まれます。定義としては夜間に排尿のために1回以上起きなければならない症状を夜間頻尿といいますが、1回起きるくらいならば何も異常がなくとも誰でもあるかと思われます。もちろん一度も起きずに熟睡できることに超したことはありませんが、やはり2回以上起きると、睡眠が妨げられて日中に眠いなど日常生活に支障をきたすと思います。また特に高齢者では夜間にトイレに行く際の転倒リスクなどもあるので、一度も起きずに朝を迎えられるのが理想です。それではさらに詳しく説明していきます。

1.原因について

夜間頻尿の原因には主に大きく分けて3つあると言われています。それぞれの原因によって治療法が異なるために、その原因をまずははっきりさせることが治療において非常に重要になります。具体的には1)多尿、夜間多尿、2)膀胱容量の低下、3)睡眠障害の3つが原因です。多尿とは単純に水分をとりすぎて夜間だけでなく日中も含め尿量が多くなるパターンや、糖尿病などの内科的な疾患が隠れていて尿量が増えるパターン、または内科で内服中の利尿薬などの影響で尿量が増えているパターンの3つあります。夜間多尿とは、正常な方でも尿量自体は男女問わず夜間の方が多くなるのですが(これは抗利尿ホルモンというおしっこを抑えるホルモンの分泌は夜間に少なくなり、年齢とともにさらに分泌が低下するからです)、その度合いが顕著で、夜間のトイレの回数だけでなく量も多い場合を指し、夜間多尿に対する投薬治療により改善が見込めます。次に膀胱容量の低下ですが、これは男性ならば前立腺肥大症に伴うものや、女性であれば過活動膀胱に伴うもので、膀胱の壁が硬くなり柔軟性を失い、そのために少ない尿量しか貯めることができず、すぐにトイレにいきたくなる状態です。3の睡眠障害は文字通り、夜間に寝付きが悪いためにトイレについでにいくといった状態で、トイレにいってもそこまで量がでないことも多いです。

2.診断について

夜間頻尿の原因が、多尿なのか(量自体が多い)、頻尿なのか見極める(回数が多い、量はそこまで)ことが大切です。そのためには排尿日誌といい、少しだけ煩わしいのですが、1日の尿量、回数、摂取した水分の量を、お渡しする冊子に記載いただき(1日では情報が不十分で2−3日の記載をお願いします)、単に飲み過ぎの多飲による多尿ではないかどうかを確認します。また夜間排尿指数といって、夜間の入眠後から朝までに出た尿量を1日のトータルの尿量で割り、その割合が33%を超えた方は、単なる多飲による多尿ではなく、夜間多尿と診断されます。問診で明らかに夜間の尿量が少ないにも関わらず、日中も夜間も問わずに回数が多い方に関しては必ずしも排尿日誌は必要ではなく、男性ならば前立腺肥大症がないかどうか腹部超音波検査で確認し、女性であれば過活動膀胱によるものではないか、質問表で確認、その後に同じく腹部超音波検査で、残尿はないかの確認を行います。

3.治療について

単なる多飲による多尿であれば、飲む量を控えてもらう生活指導になりますが、夜間多尿である場合は、夜間のおしっこの産生を抑える抗利尿ホルモン(バゾプレッシン)を補充することでその尿量を抑えることができます。ただしこの薬は男性にのみしか臨床試験で効果が認めなかったので、女性には治療の適応がないことが問題点です。前立腺肥大が原因の夜間頻尿であれば前立腺肥大の治療を、過活動膀胱が原因であればそちらの治療を行うことで男女ともに夜間頻尿の改善は見込めます。また前立腺肥大症の方は3人に1人は過活動膀胱を合併すると言われているので、過活動膀胱の薬である膀胱の柔軟性を改善する薬を肥大症の治療に併用することも多くあります。睡眠障害に対しては睡眠剤もある程度有効ではありますが、よく眠れるような生活習慣の改善やストレスを抱え込まないようにすることも重要と思います。

記事執筆者
桃園 宏之
  • 日本泌尿器科学会 指導医
  • 日本泌尿器科学会 専門医
▲ ページのトップに戻る

Close

HOME