精巣上体炎
精巣上体とは精巣(睾丸)の頭側に位置する器官で、精巣で作られた精子を蓄え、そこで精子を成熟させ、受精能獲得に作用する臓器です。また精子の通り道(精管)の一部で、精子は精巣上体を通過し精管から最終的には尿道へ運ばれます。この精巣上体に細菌等が入り込み炎症により痛みを伴う腫れを認めるのが精巣上体炎です。それではさらに詳しく説明していきます。
1. 原因について
原因は大きく細菌性と非細菌性に分かれます。細菌性は大腸菌などの尿路感染症と同様の菌が原因となることが多いです。高齢男性に前立腺肥大症や膀胱の機能低下(神経因性膀胱)などを認めると、それが原因となり残尿量が増え精巣上体炎のリスクも上昇します。一方で非細菌性は淋菌やクラミジアなどの性感染症が原因となることがあり、特に20-30代ではクラミジアによる精巣上体炎が多いです。細菌性と比較するとその症状は軽く、発熱を認めないこともありますが、軽度の陰嚢痛および精巣上体の腫脹を認めます。
2. 症状について
急性期には精巣上体が赤く腫れあがり、その周囲に水も溜まります(陰嚢水腫)。また疼痛も著明で、視診および触診で泌尿器科であれば容易に診断可能です。細菌性であれば高熱を認めることも多いです。
3. 診断について
まずは尿検査で尿中に白血球や細菌を認めないか確認します。尿検査は培養検査でその原因菌も詳細を確認いたします。性感染症を疑えば淋菌やクラミジアの検査も同じく尿検査で行います。触診で精巣上体を触り腫れや痛みがないかも確認し、症状が軽微であれば尿検査と触診くらいですが、比較的高熱を認めた場合はその炎症の程度を評価するために採血を行うこともあります。また他の緊急疾患(精巣捻転症)との鑑別のために超音波検査を行う場合もあります。
4. 治療について
治療はその原因に応じて行いますが、基本的には高齢者に多いので細菌感染症に対する抗菌薬投与となります。また疼痛を認める局所を冷やすことも効果的で、陰部をなるべく動かさず固定して氷水などで冷却してもらいます。重症度に応じて抗菌薬も点滴か内服か判断しますが、高熱もしくは採血で炎症反応が非常に高い場合や、患部の腫れや痛みが強い場合は抗生剤の点滴を行います。急性期を過ぎて症状が改善すれば内服の抗生剤に切り替えます。また原因の一つに前立腺肥大症などを認める場合は、そちらの治療も行っていくことになります。若年の精巣上体炎ではクラミジア、淋菌の関与が疑われれば性感染症治療に準じた抗生剤投与を行うこととなります。