泌尿器科専門医として伝えたいこと③【女性の膀胱炎について】
[2025.06.01]
みなさま、こんにちは。ももぞの泌尿器科クリニックの院長、桃園宏之です。本日は膀胱炎をテーマに泌尿器科専門医としての見解を述べたいと思います。膀胱炎とは主に女性にみられる、非常にありふれた病気です。どのような症状がこれに当てはまるかと申しますと、おしっこをしたのに残尿感が続く、すぐにまた行きたくなる、排尿時に痛みがある、血尿を認める、などです。またここまでの症状がなくても、なんとなくおしっこの際に違和感を感じる、モヤモヤするなども膀胱炎の初期症状の可能性があります。これらは細菌が原因となった急性膀胱炎といい、女性にしか発症しない尿路感染症です。なぜ女性にしか発症しないかというと、女性は尿道が男性に比べて短いために細菌が容易に尿道から膀胱に侵入するためです。また原因となる細菌は主に大腸菌をはじめとする腸内細菌が多く、肛門から膣を経由し尿道に菌が到達することがきっかけとなります。普段は膣の善玉菌が大腸菌を含む細菌を除菌してくれ尿道までの侵入を防いでいますが、疲れがたまっていたり、ストレス、睡眠不足などで免疫が落ちている時に発症することが多いです。よく言われる「おしっこを我慢し過ぎたから膀胱炎になった」は厳密には正しくないと思います。おしっこは無菌ですのでいくら我慢したところで、その後に全て尿を出し切りさへすれば、普段は膀胱炎にはなりえません。免疫力が落ちた時には、菌にとっておしっこは栄養の宝庫ですから、残尿があればあるだけ菌は繁殖してしまうので、尿がたくさん残っていることはたしかに膀胱炎発症のきっかけにはなると考えます。また性交渉も膀胱炎のきっかけになります。これはやはり膣と肛門が距離が近いことにより、性交渉により大腸菌が膣に侵入しやすいからです。このように膀胱炎は女性の尿路感染症なので、内科もしくは婦人科を受診する患者さんもいまだに多くおられるかもしれません。しかし残念ながら、内科や婦人科では簡易的な尿検査しかしないことが多く、それゆえ不完全な治療になる可能性があります。その理由は、当たり前のことですが、内科、婦人科はおしっこの専門家ではないからです。しかし、泌尿器科とは(名前のイメージが悪い?)男性がいく科ではないの??と女性が泌尿器科を受診するのはまだハードルが高いと感じていらっしゃる方も多いようです。当院ではそのような方々に配慮し女性が受診しやすい泌尿器科クリニックを目指しています。その一環として、女性専用外来日を設けています。毎週火曜14時-16時の時間帯は、女性患者さん専用の時間帯としていますので、ご都合が合われましたら是非ご利用ください。もちろんそれ以外の時間帯もいつでも受診ください。当院を受診頂ければ、菌がいるかどうかを顕微鏡でチェックし、さらにどんな菌なのか(尿培養検査といいます)またどの薬が効くのか(薬剤感受性試験といいます)を判別する検査もします。泌尿器科専門医は、どの科の医師よりも多くの膀胱炎治療の経験があり、近年増え続ける抗生物質に効きにくい(薬剤耐性)細菌に対する知識も豊富です。膀胱炎治療で1番大切なことは適切な抗生物質で完全に除菌することです。また薬を飲み終わった後も、おしっこの正常化をチェックします。市販薬では細菌は除菌できず、完治しないまま症状が軽くなっただけですぐにまた再発することも多く、また薬剤耐性化のリスクもあります。さらに膀胱炎だけでなく、より重症の腎盂腎炎(これは菌が膀胱からさらに上にある腎臓にまで到達する際におきます)まで引き起こすと、高熱や背部の痛み、場合によっては身体中に細菌が広がり入院の必要も出てくるため、膀胱炎症状を認めた際はなるべく早めに泌尿器クリニックの受診をお勧めします。繰り返しになりますが、たかだか膀胱炎と侮らず、女性の皆さまにおかれまして、膀胱炎かも?と思ったら、是非当院にお気軽にご相談ください。