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前立腺がん

当院では泌尿器がんのかかりつけ医としての患者様の身体的、精神的なサポートをお約束いたします。当院で診断された方はもちろんのこと、他院にて泌尿器科がんで治療継続中の方でも何なりとご相談頂ければと思います。

前立腺がんは膀胱の下にあり真ん中を尿道が貫いている前立腺という臓器に発生する、男性特有のがんです。比較的高齢男性に好発するがんですが中高年の間で急速に増加しており生涯における罹患リスクは9人に1人と高く、罹患数は部位別で男性の1位であり、死亡数も6位の疾患です。前立腺がん自体はその進行は比較的緩やかなことも多く、年齢や本人の日常生活におけるに自立度に加えて、進行具合や癌の悪さの程度によって治療法を選択します。またその治療法も手術放射線ホルモン療法など多岐に渡ります。ただし前立腺がんの中でも転移が出現して進行がんになってしまうと治療法が限られてしまい根治が期待できなくなるので、早期発見、早期治療が重要となります。

1. 原因について

前立腺がんはその発生率に人種差や地域差があるといわれています。
日本人は欧米に比して死亡率は比較的低いものの食生活の欧米化が進んだことも要因の一つで近年は急激に増加しています。
発生における決定因子は不明ではあるが人種や地域などのほかにも家系内因子(親、兄弟、親族などに前立腺がんにかかった方がいないかどうか)も有力な危険因子とされています。

2. 症状について

前立腺がんは進行がゆっくりであるために、初期の段階ではほかのがんと同様に症状がないことが多いです。ただし中高年に増加する疾患であるために、頻尿や残尿感、排尿困難感などを訴えて精査すると見つかることが多いです。しかしその症状は多くが実は前立腺肥大に伴うものであることが多いです。前立腺がんと前立腺肥大症は直接関係なく、ただし同時に罹患していることは多いです。その症状は重なるために症状だけで二つを鑑別することは困難です。進行した前立腺がんになると前述の排尿症状に加えて、尿道や膀胱まで癌が広がると血尿を認め、骨に転移した場合に起きる疼痛などを訴えて受診される方もいます。

3. 診断について

早期の前立腺がんでは自覚症状がほとんどないために、検診などで採血を受けた際にPSAの上昇を契機に泌尿器科を受診され精査で診断されることが多いです。PSA測定により前立腺がんが強く疑われた場合は針生検といって組織の採取が必要になりますが、PSAが高い=前立腺がんという訳ではありません
PSAはその他の疾患、前立腺肥大症や前立腺の炎症などでも上昇することがあり、前立腺肥大症の程度を腹部超音波検査(エコー)で確認し、尿検査で炎症がないかの確認も行い総合的に判断します。またエコーでは前立腺がんを認めるとその部位が黒っぽく写り、周囲の臓器に広がっていないかも確認します。エコー検査はお腹にゼリーを塗りエコーの先にあるプローブを当てるだけなので痛みは伴いませんのでご安心ください。
診察により前立腺がんの可能性を疑った際にはまずはMRIを撮影し前立腺生検に備えます。MRI検査は当院が地域連携を密に結んでいる日本生命病院や住友病院、関西電力病院などに当院から予約を取得可能です。MRIの結果によってさらに疑いが強まった際には確定診断のために前立腺生検が必要になります。生検が必要と判断した際には再度、MRIを撮影した病院にスムーズにご紹介させて頂きますのでご安心ください。
生検でがんが検出されれば、その後は内臓やリンパ節に転移がないかどうか胸と腹のCT検査を行い、骨に転移していないか調べるための骨シンチ検査も行い最終的ながんのステージを決定します。

4. 治療について

前立腺がんの治療法は多岐に渡り、まずは転移していないか(前立腺だけにとどまっている癌か)どうかで大きく方針が異なります。
前述の検査によりステージングの後、転移をしていない場合は、本人の年齢や日常生活の活動度、治療方法の希望をよく相談のうえ根治を目指すこととなります。
根治療法とは大まかに手術放射線療法があり、手術はロボット支援の腹腔鏡手術で行うことが多いです。
ロボット支援手術とはロボットのアームに装着してある内視鏡や手術器具をお腹に複数小さな穴をあけて挿入し前立腺をがんも含め全て取り除きます。前立腺およびその付属器といって左右についている精嚢も取り除き、術後に射精は行えなくなります。また術後の合併症としては失禁や勃起障害が問題になります。
現在多く行われているロボット支援手術では従来の開腹手術に比べ圧倒的に繊細な手術が行えるために出血量も少なく手術時間も短くなっておりその副作用が完全にゼロとは言えませんがかなり減らすことが出来ています。
またがんの広がり具合にもよりますが勃起をつかさどる神経を温存することも可能です。
入院は必要となりますがその期間は概ね10日程度で退院できます。

放射線療法には外照射療法(IMRT)といって身体の外から放射線を前立腺にあてる方法が主流で、手術と異なり入院が不要で身体への負担も軽いのが特徴です。
通院治療で行え1回あたりの治療時間は15分程度ですが、それを1日1回、週に5回の照射を合計6-8週間行う必要があります。
合併症としては手術と異なり尿失禁はおきませんが、頻尿や排尿時痛、排尿困難感、血尿などの合併症が起きることがあります。
これらの早期に起きる合併症は一過性のために1か月程度で改善することが多いですが、晩期に血便などの直腸出血が起きることもあります。
最近ではそのような合併症を予防する前に直腸と前立腺の間のスペースにジェルのシートを挿入してから放射線治療を開始することも行われています。
放射線療法には外照射療法以外にも2018年から粒子線治療が保険適応になり患者様の治療選択は広がりました。
粒子線には重粒子線陽子線治療があり、治療効果は前述のIMRTと同等とされていますが行える施設が限られています。
それぞれ治療期間は重粒子線で週に4回の合計12回で3週間、陽子線は週に5回、合計40回の7-8週間です。
いずれの放射線治療も前立腺癌の再発リスクが高いものに関しては後述のホルモン療法を併用することがほとんどです。
放射線治療にはこの他に、小線源療法という前立腺内に放射線を放出する線源(カプセル)を埋め込み行う治療があります。
カプセルにはヨウ素という放射線同位元素が含まれています。
この治療は他の放射線治療と異なり前立腺生検と同様の下半身麻酔を行うので入院が2-3日必要となります。
勃起障害に関してはいずれの放射線治療も手術に比べると圧倒的に起こりにくいとされています。
小線源療法は以前に神戸大学病院で担当もしておりました。

次に転移していた場合の治療法についてですが、前立腺がんは男性ホルモンを餌に成長することが分かっており、基本的な方針としては男性ホルモンを抑えることになります。
従来は注射によるホルモン療法(1か月毎や3か月毎などがあります。リュープリン®やゴナックス®などにより精巣からの男性ホルモン(テストステロン)の産生を抑え、残り1割のテストステロンが産生される副腎からのホルモンを抑える内服治療(カソデックス®)を併用して行っていました。
ただしその治療法では2年以内に半分近くの方にホルモン療法が効かなくなり問題でした。現在ではホルモン未治療の前立腺がんにおいて、最初の段階から従来の内服治療ではなくホルモン注射に加えて新規のホルモン剤内服(ザイティガ®、イクスタンジ®)を癌の再発リスクが高いものに併用する方法が一般的になっています。
ポイントとしてはいかにホルモンが効かなくなる去勢抵抗性前立腺がんまでの期間を延ばすことでありそのように初めからより強力な治療を行うことが多いです。
また今まではホルモンが効かなくなった場合は抗がん剤の選択肢しかなかったのが、前述の2剤の新規ホルモン剤に加えて新たに2剤ホルモン剤内服(アーリーダ®、ニュベクオ®)の選択肢が増えています。
ただしそれぞれ1つを使用し効かなくなると、次のホルモン剤には劇的な効果は期待できないことが多いために、患者様個々の状態や生活スタイルなどを総合的に鑑みて慎重に選択する必要があります。
その他、ホルモンが効かなくなった際には遺伝子の異常を調べたうえで行うPARP阻害薬(リムパーザ®)の内服などもあります。
その他にも従来からある抗がん剤治療(ドセタキセル®やカバジタキセル®)といった点滴による治療もホルモン療法が効かなくなった際には効果の期待できる治療法です。
また最近では再発リスクが高く比較的若くかつ元気な方には従来のホルモン注射に加えて新規ホルモン剤(ニュベクオ®)と抗がん剤(ドセタキセル®)を3剤併用してがんの進行を抑える治療法もございます。

5. 当院での治療

前述の薬物療法が主になります。
その中にはご高齢や体の状態を加味して根治の適応ではあるがホルモン療法を選択された方や、不幸にも転移を認めたハイリスクの方や、初回のホルモン療法が効かなくなり去勢抵抗性前立腺がんとなり薬を変更された方、術後にPSAが上昇し再発と診断された方など対象は様々です。

私自身、ロボット支援手術を多数執刀医として行っていた経験を有し、また泌尿器科医では比較的稀ですが放射線治療(とくに小線源療法は主治医として小線源の留置を行っていました)の経験もございます。

そのために手術および放射線のメリット、デメリットをそれぞれフラットな視点でご説明ができます。

薬物療法においては神戸大学病院を含めた多数の癌拠点病院での豊富な治療経験および学会での発表も多数ございます。
大学院ではホルモン抵抗性の前立腺がんについて研究を行っていました。
文面では書ききれませんが、その他、前立腺がんに関して何かご質問ございましたら、どんなことでもお気軽にご相談頂ければと思います。
前立腺がんのスペシャリストとして親身にお答えいたします。

記事執筆者
桃園 宏之
  • 日本泌尿器科学会 専門医
  • がん治療認定医
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