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陰嚢(たま)が腫れてきた

陰嚢とはいわゆる男性の玉袋のことでその中に精巣(きんたま)があります。
何らかの原因で陰嚢が腫大した場合は、みなさま確実に泌尿器科を受診してくださいます。年齢によってその原因となる疾患の起こりやすさも異なり、また疾患によっては緊急性を要することもあり注意が必要です。それではもう少し詳しく説明していきます。

1. 原因について

年齢により好発する疾患が異なり、小児期では交通性陰嚢水腫、鼠経ヘルニア、青壮年期では精巣癌陰嚢水腫、高齢者では、精巣上体炎や精巣炎などの尿路感染症や、心不全や低蛋白血症に起因するものなど様々です。それぞれの詳しい説明は下記をご参考にください。

2. 検査について

まずは疼痛の有無と炎症所見の有無を確認します。その後に、超音波検査で精巣は正常なのか否かを確認します。陰嚢水腫であれば、超音波検査で正常な精巣の周囲に無エコー像である液体貯留を呈するのみで容易に診断が可能です。
精巣癌では精巣自体が辺縁不正の低エコー像や混合エコー像(黒い部位と白い部位が混在)を呈します。多くは無痛性であり、超音波検査で診断が可能なことも多いですが、腫瘍マーカーはその診断および治療法に重要な指標であるので採血により精巣癌の腫瘍マーカーを測定します。腹部超音波では精巣炎や精巣上体炎といった感染症と鑑別がまれに困難な場合はCTやMRI検査を併用することもあります。精巣上体炎や精巣炎といった尿路感染症は問診、尿検査、触診で判明できることが多いです。またそれらの炎症性疾患では、発熱や排尿時の痛みを伴うことが特徴的です。痛みを伴う陰嚢の腫大で一番気をつける必要があるのが、思春期に起こりやすい精巣捻転症です。精巣捻転症とは、陰嚢内容(精巣と精巣上体)が精索(血管や神経の束)の部分で回転し虚血を起こす泌尿器科では珍しい緊急疾患です。好発時期は新生児期と思春期にあります。急激な痛みを生じ、徐々に陰嚢が赤く腫れてきます。超音波検査で精巣に血流があるか確認するのが基本にはなりますが精巣上体炎との鑑別に難渋することもあり、精巣捻転症は、早急に整復(捻れを戻す)必要があり、疑った際には躊躇せず、手術による整復および固定術(捩じれた側と、その対側も捻れないように陰嚢に固定します)を行うことも多いです。

記事執筆者
桃園 宏之
  • 日本泌尿器科学会 指導医
  • 日本泌尿器科学会 専門医
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