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PSA高値を指摘

がん検診とは、がんの早期発見、早期治療を行うことでそのがん死を減少されることが目的で日本では罹患率、死亡率の高い胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん、子宮頸がんに加えて前立腺がんにおいてその検診が実施されています。PSAとは採血のみでわかる、前立腺がんの可能性がある方をみつけるための検査です。前立腺がんは男性の罹患数では一位であり、前立腺がん死亡率を低下させるPSA検査を用いた前立腺がん検診を日本泌尿器科学会は強く推奨しております。欧米では日本よりも早期にPSA検査がはるか前から普及しており、その検診の普及に伴い前立腺がん死亡率は1990年代をピークに低下傾向にあります。その一方で日本では前立腺がんは最も罹患率が高く死亡者数も年々上昇傾向にあり、早期発見のためのPSA検診を第一ステップとした前立腺がん対策が重要です。当院でも積極的に早期発見、早期治療が行えるように泌尿器科を受診される50歳以上の患者様にはその啓蒙およびがん検診に力を入れていきます。豊富な前立腺がんの知識や治療経験を元に、患者様にあった治療法を、泌尿器科専門医、がん治療認定医として責任をもって提示いたします。

前立腺がんについて

1. PSAとは

前立腺がんの優れた腫瘍マーカーで、その本体は前立腺の腺上皮細胞から分泌される蛋白です。その多くは精液中に分泌され、ごく微量のみが血液中に取り込まれると言われています。前立腺がん細胞にもPSAを分泌能があり、がんが進展するにつれ血中のPSA値は高くなります。PSAの値を使い前立腺がんのスクリーンング検査をする場合は基準値を4ng/mlとする場合が多く、4以下で正常領域、4以上10以下でがんを疑う領域、10より大きい場合は強く疑う領域とされています。またPSAは前立腺がんの悪性度や再発リスク因子にも用いられることや、前立腺がん治療経過のフォローアップにも有効で治療が奏功した場合は低下率が大きく、治療中に上昇傾向を認めた際は前立腺がんの再発や転移の可能性が高くなるので、われわれ泌尿器科医にとってはなくてはならない、圧倒的に一番多くみる採血データです。

2. PSAが上昇する原因について

PSA高値イコール前立腺がんというわけではありません。前立腺から分泌される蛋白でがん細胞以外の正常組織からも分泌されるからです。具体的には前立腺肥大症や、急性前立腺炎などの良性疾患や、射精や自転車などのサドルに長時間座り、会陰部に機械的刺激を与えた場合などは、前立腺がんを認めなくても血中のPSA値が上昇することがあります。従ってあくまで目安にはなりますが、PSA値を前立腺肥大症ではその前立腺容積で除した値(PSA density)でよりがんの可能性が高いかを判断したりすることもあります。例えば容積が50mlありPSAが5であった場合は5÷50で0.1がPSA densityになります。一方で容積が20mlであるにも関わらずPSA値が同じ5であった場合は5÷20でPSA densityは0.25となります。このカットオフ値(がんのリスクが高くなる基準値)は0.15とされていて、同じPSA値でも肥大症がある場合とない場合でその違いを考慮することで、不要な侵襲検査を少しでも減らす工夫も行われます。

3. PSA高値の際に行う検査について

1.腹部超音波検査

PSA値は前立腺肥大症でも上昇するので腹部超音波検査によりその容積を確認し、前立腺肥大が合併していないかどうかを確認します。はっきりとした前立腺癌を認めれば超音波所見で黒く描出されることもあります。

腹部超音波検査

2.直腸診

前立腺の硬さや周りとの癒着具合を確認するために以前はよく行われていましたが、羞恥心や軽度の痛みを伴うので今ではほとんど外来では行いません。前立腺生検時に麻酔がかかった状態で患者様の痛みが全くない状況下で、生検前にルーチーンで行うように心がけています。

3.MRI検査

他のPSAが上昇する疾患が除外され、前立腺癌の確定診断に組織診(前立腺生検)が必要と判断した際には、生検前にMRI撮影を行うことが多いです。当院の連携病院へMRI予約も取得できますのでご安心ください。

4.前立腺生検

前立腺がんを疑った際には最終的には確定診断に必須の検査になります。基本的には部分麻酔もしくは局所麻酔を用いて、肛門から超音波検査のプローベを挿入し、エコー下で前立腺を確認しながら左右に数カ所ずつランダムに組織を針で採取してきます(系統的前立腺生検)。エコーで前立腺癌を疑う部位は黒く描出されますのでそこを目がけて生検を行うのですが、正確ではないこともあり、現在では事前にMRI画像で確認した癌の部位を超音波画像にソフトウェア上で事前に重ね合わせた画像イメージを作成し針を指す(標的前立腺生検)も行われている施設も徐々には増えてきています。前立腺生検が必要と当院で判断された方は、当院が連携している病院を含めご希望の病院に速やかに紹介致しますのでご安心ください。

以上、PSA高値を指摘された際の原因や検査についてです。繰り返しになりますが、我が国においては前立腺がんがその罹患率、死亡数もますます増加していく疾患です。転移を認めなければその治療法は多岐に渡り、患者様個々の考え方、生活スタイルに応じた治療法の提示が可能です。私は前立腺がんの手術療法、薬物療法含め、非常に豊富な経験と知識がございます。当院の受診をきっかけに少しでも前立腺がんでがん死する患者様が減るよう、地域住民の皆様の健康維持に寄与できるように努めていきます。

記事執筆者
桃園 宏之
  • 日本泌尿器科学会 指導医
  • 日本泌尿器科学会 専門医
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