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肉眼的血尿を認める

泌尿器科を受診するきっかけとして、尿の色調や性状の変化も多くございます。1日の尿量が少なくなると色調が濃くなったりすることは問題ないのですが、赤色もしくは褐色になることは、正常では起こりえません。目でみて分かる、いわゆる肉眼的な血尿を認めた場合はその原因に何か重要な泌尿器科疾患が潜んでいるサインかもしれませんので泌尿器科専門医に早めに受診することをお勧めします。それではもう少し詳しく説明していきます。

1.症状について

血尿に何らかの症状が伴う場合を症候性血尿といい、痛みや頻尿、残尿感などの膀胱刺激症状を伴う場合は膀胱炎である場合が多いです。ただし膀胱結石や膀胱癌なども同様の症状を伴いますので必ず鑑別は必要です。また尿路結石でも肉眼的な血尿を認めます。結石であれば出血が尿管を閉塞することで起きる疼痛や結石自体が移動して起きる痛み等と一緒に起きることが多いです。急性前立腺炎でも血尿を認めることがあり、その場合は排尿困難感や発熱などを伴います。反対にそれらの症状をないも伴わない血尿無症候性血尿といい、むしろそちらの方が心配な疾患が潜んでいる可能性が高まります。具体的には腎がんや膀胱がん、腎盂•尿管がんなどの悪性腫瘍が挙げられます。頻度は高くないですが前立腺がんでも肉眼的血尿を認めることもあり、泌尿器科で扱う多くの癌では無症候性の血尿を契機に見つかることが多いです。
またその血尿の出現パターンでもどの臓器に原因があるかある程度の特定は可能です。排尿の前半に生じる場合は尿道に原因があることが多く、排尿中の全排尿であれば膀胱あるいは腎〜尿管までの上部尿路に原因の可能性が高いです。排尿の最後に認める場合は膀胱頸部(出口)もしくは前立腺の炎症に伴うことが多いとされています。

2.検査について

尿検査

肉眼的に血尿を認めた場合、まずは顕微鏡で赤血球が尿中に存在していないかを確認します。その理由は試験紙で行う尿潜血の検査はヘモグロビンを調べており、例えばビタミンCの大量摂取した際は偽陰性に出たり、ミオグロビン尿では偽陽性になったりするので、必ず顕微鏡で血尿の原因が赤血球であることを確認する必要があります。これをクリニックレベルで迅速に行うのは泌尿器医のみで、内科や婦人科では試験紙(市販もされているもの)での簡易的な検査であることがほとんどです。

検尿検査

腹部超音波検査

頻尿や排尿時の痛み、残尿感などの膀胱刺激症状などを認め、尿検査からも膀胱炎などの尿路感染症を強く疑った場合以外は、血尿の原因となる怖い病気がないかを調べるために超音波検査は簡便でまず行う検査になります。ゼリーをエコーの先端に塗って、下腹部(膀胱や前立腺)あるいは背部(腎)に、結石や悪性腫瘍などを認めないか確認する検査です。痛みは伴わず5分程度で、即日に行えます。尿管結石に伴う尿の滞りがないか(水腎症)も同時に確認します。

超音波検査

レントゲン検査

背部痛や下腹部痛を伴う血尿であった場合は尿路結石の可能性が高くなりますので、レントゲンでその結石の位置やサイズを確認します。9割近くの結石はレントゲンで写りますが、その成分によってはレントゲンでは写らない結石もございます。また骨盤の高さに位置する場合やガスが多量に貯まっているとそこに隠れてはっきりしない場合もあります。

X線検査

尿細胞診

痛みも何も伴わない無症候性の肉眼的血尿は、膀胱がんを含めた悪性腫瘍の可能性がございます。そのため腹部超音波検査と同様に必須の検査になります。尿検査でその中に癌細胞が存在していないかを調べる簡便な検査になり、悪性度の低いがんでは陽性にならないこともありますが、スクリーニングには重要な検査になります。

軟性膀胱鏡検査

血尿ガイドラインにおいては肉眼的血尿を認めた場合は推奨されている検査です。腹部超音波検査で膀胱癌を疑ってもそれはあくまでエコーの陰影をみているのみで、その性状までははっきりしません。一方でこの内視鏡検査は多少の体への負担は伴いますが、内視鏡でその腫瘍の性状をみることである程度の確定的な診断がつきます(最終的な組織診断には手術が必要になりますが、手術を行う前には必ず必要な内視鏡検査になります。)当院では細径の軟性鏡を使用し、検査前にもゼリー麻酔を塗布し、さらに優しく丁寧に行いますので、痛みはゼロとは言えませんが、ほとんどないと安心してお任せ頂ければと思います。

内視鏡検査

CT検査

主に悪性腫瘍のさらなる精査で造影剤を使ったCT検査や、結石を強く疑うけれどもレントゲンで写らない比較的稀なパターンの結石の診断の際に行います。CTが必要と判断すれば、当院から連携施設の病院のご予約をおとりすることもできますのでご安心ください。

MRI検査

前述の造影CTが腎機能の影響で行えない方や、膀胱がんの筋肉への浸潤度を確認する場合などに行います。こちらも当院から連携施設に検査の予約を取得可能です。

3原因疾患について

上記に説明した、肉眼的血尿の原因となりうる疾患を下記に列挙しましたので、それぞれのページをご参照ください。

肉眼的血尿は放置していい疾患では決してありません。ただしどの血尿も、特に痛みなどがない危ない疾患が潜んでいる血尿に限って、一度血尿を認めたもののその後は自然に消失したので放置されてしまうことも少なくないです。喫煙歴がある方や50歳を超えている方は特にリスクが高いので、血尿を認めれば早めに泌尿器科専門医を受診して頂ければと思います。

記事執筆者
桃園 宏之
  • 日本泌尿器科学会 指導医
  • 日本泌尿器科学会 専門医
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