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血精液症

射精された精液に血液が混じり、精液が赤色になる状態を血精液症といいます。射精した際にいきなり気が付くことになるために非常に不安になり受診される方も見受けられます。ほとんどの方は痛みや違和感など出血以外の症状は認めないことが多いです。その色調も鮮やかな赤色から茶褐色に近い場合と様々です。赤色に近ければ最近の出血の可能性が高く、茶褐色であれば少し時間の経ったものと考えます。精液はその成分が精子と、精嚢液、前立腺液から成り、ほとんどが精嚢液および前立腺液が占めます。ですので血精液症は精嚢もしくは前立腺からの出血であることがほとんどです。その出血の原因に関しては原因不明であることが多く、またほとんどが治療を必要とせず自然に止血し軽快します。それではあと少しだけ詳しく説明します。

1. 原因について

検査をしても原因が何かはっきりしない特発性とされるものが大多数を占めます。おそらくは前立腺や精嚢にある微小な血管からなんらかの原因で出血しているものと考えられます。その中でも原因のはっきりしているものに、前立腺生検後の射精があります。前立腺生検とは前立腺癌を疑った際に行う必須の検査で直接針を前立腺に刺して検査しますので、当然前立腺から出血し、その後の射精では高頻度で血精液症を認めるます。そのために生検前にはその合併症に必ず血尿とともに血精液症をお伝えしています。またそれ以外にも前立腺や精嚢の炎症、頻度は高くありませんが精嚢、精巣、前立腺の腫瘍なども重要な原因となり得ます。

2. 検査について

診断は患者様からの訴えで容易に可能です。検査は尿検査でおしっこの中には赤血球が混じっていないか、尿路感染症の合併はないかを確認します。また超音波検査で精嚢、精巣や前立腺に異常がないかを確認します。超音波検査で腫瘍の存在が疑われた際はCTもしくはMRI検査を追加することもあります。50代以上では前立腺癌を除外するために採血でPSAを測ることもあります。ただし前述のとおりそれぞれの検査を行ってもいずれも異常を認めないことがほとんどです。

3. 治療について

多くの場合は検査で特に異常を認めないので経過観察を行います。完全に出血が消失するまでには数週間かかることがあります。長引くようであれば性器の安静のために射精は控えてもいいかもしれません。もちろんですが、前立腺炎などの尿路感染症が原因であれば抗菌薬投与も行います。また一時的に止血剤を出すこともあります。頻度としては決して高くないですが、前立腺癌などを認めた場合はそちらの治療を行うことにになります。とはいえ、その見た目にはびっくりする症状の割に、何も異常がないことがほとんどですのでご安心頂ければと思います。心配でしたら泌尿器科を受診頂ければ、前立腺癌のがん検診を含めなんなりとご相談ください。

記事執筆者
桃園 宏之
  • 日本泌尿器科学会 指導医
  • 日本泌尿器科学会 専門医
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