尿失禁
尿失禁とは自分の意思とは関係なしに、尿が漏れてしまう状態をいいます。実際に悩んでいる方も多いにも関わらず、恥ずかしさから受診できていない方が非常に多いのが実情です。その原因に応じた適切な治療を行うことで改善が見込めますので、痛い検査などもございませんので是非、おしっこの専門家、泌尿器科を受診いただければと思います。それでは失禁の種類別に詳しく述べていきます。
1. 腹圧性尿失禁
全ての尿失禁のうち一番多いのがこのタイプになります。腹圧とは文字通りおなかに予期せぬ力がかかった際に、尿が漏れてしまうことを言います。腹圧性尿失禁のうち85%は女性におき、4人に1人の女性は腹圧性尿失禁の経験者ともいわれています。原因は分娩や加齢、エストロゲンの低下などで骨盤を支える筋が弱くなり腹圧がかかった際に尿漏れが起こるとされています。基本的には問診で診断可能で場合によっては排尿日誌といい排尿記録を記載いただくこともあります。治療薬は保存的な治療は骨盤底筋体操や磁気刺激、干渉低周波治療などがあります。それ以外にも急激に太った方はダイエットも有効なことがあります。内服薬では膀胱の柔軟性を回復する薬剤が有効です。保存治療での改善が難しい場合はスリングといった支えのテープを尿道の下を通して尿道を支えるTVT手術やTOT手術などもあります。
2. 切迫性尿失禁
強い尿意が急に現れて我慢できずトイレに着く前に漏れてしまう状態をいいます。膀胱にある排尿を司る排尿筋が勝手に収縮してしまうことによります。勝手に収縮する原因としては男性では前立腺肥大症、女性では膀胱瘤や子宮脱といった性器脱が原因となることもあれば、原因がはっきりしない場合もあります。また男女ともに過活動膀胱の症状のひとつに切迫性尿失禁があり、こちらがその原因疾患として圧倒的に多くを占めると思われます。腹圧性尿失禁と同様に膀胱の柔軟性を回復する薬剤が非常に有効です。また骨盤底筋運動や尿意があっても少し我慢をする膀胱訓練などを併用するとより有効的です。
3. 溢流性尿失禁
慢性的に尿閉といっておしっこが自力で出ていない状態が続くことで、その膀胱の容量を超えてしまい、常時尿が漏れている状態をいいます。前2つの蓄尿障害とは明らかに異なりその治療方針も全く逆です。前の2つは膀胱の柔軟性を回復し、たくさん貯められるようにするのに対して、溢流性尿失禁では尿を出せていないことが問題なので、その尿閉の解除をまずは行います。具体的には男性で前立腺肥大症が原因であればその治療を、女性で神経因性膀胱が原因であればその治療を行います。ただし本人は慢性尿閉を長期間自覚していないことも多く、溢流性失禁まで起こした状態では尿が逆流し水腎症を来していることもあり、尿道のカテーテルを留置し排尿管理を行う方がいい場合も多々あります。