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精巣がん

精巣とは男性の生殖器で陰嚢の中に収まっている左右についている臓器です。その働きは精子や男性ホルモンを産生しています。この精巣に発生する癌を精巣がんといい、我が国での発生率は欧米と比較すると稀で10万人に1人とされています。その大部分は多分化能をもつ胚細胞から発生する胚細胞腫瘍であり、各分化の段階で多彩な組織像を示します。主に単一型の組織で形成されるセミノーマとセミノーマ以外の成分を含む非セミノーマに大別され、セミノーマの方が放射線治療や抗がん剤治療に対して感受性が高く良く効きます。それではもう少しだけ詳しく述べていきます。

1. 疫学について

人種差が知られており欧米人や白人に多い傾向にあります。停留精巣がその発生リスク因子としてよく知られており2〜9倍とされています。また精巣癌の家族歴や対側精巣癌の既往歴などもリスク因子です。よく起きる年齢は20代から30代ではあるものの、0から4歳、45歳から54歳にも小さなピークあるとされています。

2. 検査について

精巣の腫大を認めた場合は精巣癌を念頭において触診超音波検査を行います。また採血で腫瘍マーカーであるAFPhCGLDHなどが上昇することがあり、これらは精巣がんの診断、治療方針の決定、予後評価などに極めて重要なために精巣がんを疑った際は必須です。また後腹膜リンパ節や肺に転移することもあるのでCT検査平行して行う必要があります。

3. 治療について

他の泌尿器がんとは異なり精巣がんと診断されたら、転移があるなしに関わらず、まずは高位精巣摘除術を行います。高位とは精巣のみでなく、その頭側に位置する精巣を栄養する血管や精管を覆う組織(精索といいます)をまとめて切除することを意味します。そこで得られた病理診断で組織型を確認し追加治療を行うか検討します。具体的には再発を予防するために1期であっても再発しやすい後腹膜リンパ節領域に放射線をあてることや(予防照射)、カルボプラチンという抗がん剤を1〜2コース行うこともあります。2期以上ではBEP療法(ブレオマイシン+エトポシド+シスプラチン)を3〜4コース行い、その効果を腫瘍マーカーなどで判定します。どのくらいの期間を投与するかはその再発リスクのレベルによって異なります。また化学療法施行後に後腹膜リンパ節郭清術を行うこともあり、これらの集学的治療により転移があっても治癒が見込め、予後不良群の治療成績も向上しています。

精巣がんは若年男性に多く、またすでに遠隔転移を有した症例であっても、手術療法および化学療法(抗がん剤治療)を組み合わせた集学的治療8割以上が治癒可能な悪性腫瘍です。ただし社会的な認知はまだ十分とは言えず、精巣の腫大を自覚した場合は早めに泌尿器科を受診することが重要であると言えます。

記事執筆者
桃園 宏之
  • 日本泌尿器科学会 専門医
  • がん治療認定医
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