検尿検査
泌尿器科診察において尿検査は非常に重要な検査です。患者さんへの負担もなく簡便に行え、外来に受診された方には基本的にまずは尿を提出頂きます。検尿とも呼ばれており、まずは尿を試験紙で確認し、生化学的な性状を確認します。これはよく検診で行われる検査で簡易的な尿検査で定性検査と呼びます。定性検査とは具体的には、尿蛋白や糖、潜血などを確認することです。その後に、尿沈査を行いさらに詳しく尿を確認するのが泌尿器科です。尿沈査とは、定量検査ともよばれ、実際におしっこの中に白血球、赤血球、上皮細胞、細菌などの存在がないかを顕微鏡で確認します。近年、大きな病院では機械で尿沈査を行うことも多いですが、泌尿器科医自身が尿沈査でみることが望ましいとされています。それでは泌尿器科で基本ではあるが極めて大切な検査ですので、少し詳しく説明していきます。
1.採尿方法
検体に尿道出口の汚染による影響を排除するために、中間尿を採取していただきます。中間尿とは、最初と最後の尿を除いた尿のことで、出始めの尿(20ml〜30ml)は捨てた途中の尿を提出頂きます。特に細菌培養検査を行う時は、常在菌の汚染を防止するためにより正確に中間尿の提出が望ましいです。
2.尿定性試験
提出頂いた尿を試験紙に浸して発色の変化を読み取ります。簡便であり検診などのスクリーニング検査で広く普及していて内科クリニックなどの尿検査はこの検査になることが多いです。試験紙では蛋白や糖、潜血、pH、ビリルビンなどの項目が検査可能です。ただし様々な薬剤やその代謝物により検査結果に影響が及びやすく偽陽性や偽陰性も多い検査で注意が必要です。
1)尿蛋白
健常な方でも、起立性、運動性、ストレス性などの蛋白尿は生理的なものと言われていますが、再検査でも尿蛋白が持続する場合は注意が必要です。この場合は同じおしっこの専門家でも、泌尿器科でなく腎臓内科にその原因を詳しく調べていただくことになります。また試験紙法では、肉眼的血尿やアルカリ尿、高度濃縮した尿などでは尿蛋白が偽陽性を示すことがあります。
2)尿糖
高血糖や糖尿病の方で尿糖陽性を示し、糖尿病のスクリーニング検査になります。ただしビタミンCを多く摂取した後は、偽陰性を示すことがあり注意が必要です。
3)尿潜血
尿中のヘム蛋白出現により尿潜血反応が陽性になります。ただし尿潜血がイコール血尿ではないことに注意が必要です。血尿は赤血球が尿中に認めることですが、ヘム蛋白は血尿以外にも、体内で大量に赤血球が破壊された際に認めるヘモグロビン尿や、筋肉の損傷時などに認めるミオグロビン尿でも認め、潜血が陽性になります。また尿糖と同様にビタミンCにより偽陰性が起きることもあります。
4)尿pH
通常は弱酸性(6.5前後)ですが、食事の影響で5〜8まで変動します。感染により細菌がアンモニアを産生しアルカリ化することもあります。尿路結石の再発を繰り返す方では結石の成分によっては尿のアルカリ化が尿酸結石やシスチン結石の予防にも役立つことがあります。
3.尿沈査(尿定量検査)
採取した尿を10mlほど5分間の遠心分離を行い、遠心終了後に上澄みを破棄し、その下に沈殿したものだけをスライドグラスにのせ、カバーグラスを掛けて顕微鏡で観察します。
1)赤血球
定性試験(試験紙)で潜血陽性であった場合、これが本当に血尿なのかを判断するのに確認することが必須な項目です。顕微鏡で視野内に5個以上認めた場合は顕微鏡的血尿が陽性となり、いわゆる血尿の診断がつきます。また潜血反応が陰性でも赤血球を認める際は、ビタミンCなどの影響で定性試験が偽陰性であったことになります。
2)白血球
そのほとんどが好中球で、増加する場合は炎症性疾患の存在を示唆します。赤血球同様に5個以上認めた場合を膿尿と診断がつきます。外来に受診される膀胱炎症状のある方はほぼ皆さん白血球多数ですが、中には膀胱炎初期で受診された場合はそこまで膿尿が著明でないこともたまにあります。膀胱炎患者さん診断時に多量に認めた白血球が、ほとんど認めなくなるので、その治療効果判定にも用いる項目です。また、細菌培養検査が陰性であるにも関わらず膿尿を認める場合はクラミジアやマイコプラズマなどの感染も考慮する必要があります。
4.尿培養検査および薬剤感受性検査
尿路感染症治療において、尿培養検査は重要かつ必須の検査です。白血球が多数あり症状からも尿路感染症が明らかな場合でも、実際にその感染の原因菌は何であるかその正体を探るために必要だからです。また菌が検出された場合は、どのような抗菌薬に効果があるのか、もしくは耐性菌(抗菌薬に効果がない)ではないかも薬剤感受性試験にて確認します。培養結果が出るまでには5日間ほど要します。耐性菌が検出された場合は基礎疾患になにか複雑性尿路感染症になる要因がないかも検討します。
以上、尿検査についての解説になります。たかだか尿検査と侮ることなかれ、簡便にも関わらず様々なことが尿検査によって調べられることがわかって頂けたかと思います。