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夜尿症

就寝時に起きることなく排尿することを夜尿症といい、乳幼児では問題なく学童期前に自然に治ることがほとんどです。「5歳以上で1か月に1回以上の頻度で夜間睡眠中の尿失禁を認めるものが3か月以上続くもの」がこどもの夜尿症(おねしょ)と定義されます。小学校に入学してからも夜尿症が持続している割合は10%前後とされ、その多くの方は自然に治るとされていますが0.5%~数%は解消しないまま成人に移行するともいわれています。そのために小学校に入学しても夜尿症がなかなか治らない場合は泌尿器科の受診をお勧めします。治療介入により自然経過に比べると治癒率を2-3倍高めることができ、また治癒までの期間も短縮すると言われています。

夜尿症を認めるお子さんは人知れず悩み、他の子に比べると自尊心も低くなるとの報告もあり、治療介入により自ら夜尿症を克服することでその自尊心も回復が見られたとの報告もございます。それでは夜尿症の原因と治療法について解説していきます。

1. 原因について

夜尿症の原因は、まずは膀胱がいっぱいになっても尿意で目を覚ますことができない覚醒障害が基本です。ただし親御さんもお子さんが起きずにぐっすり眠れるならば、おむつ内におねしょを多少しても起きない方がいいとの考え方ももちろんあると思いますし、私もそう考える方です。夜中にむやみに起こすのは睡眠リズムを乱しお子さんの成長にもよくないと考えるからです。また熟睡している時には後述する抗利尿ホルモン(おしっこを抑えるホルモン)がたくさん分泌されるために量が少なく濃い尿が作られるので、無理に起こさないことはその点からも大切です。話は脱線しかけましたが、おしっこが漏れそうになっても目が覚めないこの覚醒障害に加えて、睡眠中の膀胱の働きが未熟で膀胱容量が小さくたくさん尿を貯められない、またはある程度溜まるとすぐに膀胱が収縮して尿をしてしまうこと、さらには夜間の尿量が多くなること(夜間多尿)などが重なると夜尿症が発生します。また頻度は少ないですが、夜尿症の中には腎臓や膀胱の器質的(臓器そのものに)異常にその原因を認めることもあり、夜だけでなく昼もおもらしをしてしまう場合はその割合が高いともいわれています。

2. 治療について

多くの方は自然治癒が期待できるので小学校低学年の軽症例では様子をみることも多いです。治療を開始するにあたりまずは生活指導、夕食後の飲水を控える、就寝前にはおしっこを徹底するなどを行ったうえでその効果を確認します。生活指導には、夕食後の飲水は控えることや就寝前のおしっこを徹底すること以外に、昼間はなるべく十分な量の水分をとり自然な方法で膀胱容量を増やすこと、夕食は早めに済ませて早寝、早起き、規則正しい生活を心がけてもらいます。生活指導を行ってもその改善効果が乏しい場合は次の治療ステップに移ります。夜尿症は覚醒障害および膀胱容量が小さいことと夜間多尿が原因ですので、治療法をそれらに対して行います。ただし覚醒障害(漏れる前に目覚めない)に関しては神経系の発達を待つしかなく直接作用する薬剤はありません。そのために膀胱容量を増やすこと、夜間の尿量を減らすこと目標になります。膀胱容量を増やす治療としてはおねしょアラーム療法、夜間多尿を減らす治療は抗利尿ホルモンの投与があります。おねしょアラームとは濡れたらブザーがなるアラームをオムツに装着して睡眠して頂き、おねしょをしてブザーが鳴ることで夜の尿直後に起こす治療になり、自分で起きない場合はご家族の協力も必要になります。先ほどの無理に夜間に起こすのがよくない持論には一見矛盾いたしますが、治療の一環であり、一定期間のみで行います。おねしょのタイミングでアラームが鳴り起きることで、なぜおねしょをしなくなるかそのメカニズムはよくわかっていませんが、この治療により膀胱容量が増加し、朝まで夜尿をせず持つようになると言われています。本人と親御さんが一緒になって3か月間頑張って継続していただきます。

次に夜間多尿を減らす抗利尿ホルモンですが、ミニリンメルト®といい、口腔内で自然に溶ける薬で水なしでも容易に服薬できます。これを眠剤に内服してもらい、夜間の尿量を抑える治療となります。体内に水分が溜まるので就寝前の2-3時間以内は水分制限が必要になります。この治療はある程度の効果は期待できますが服薬をやめると再発しやすいということが難点です。

 

おねしょはほとんどの方が自然に治るもので、基本的には生活指導で様子をみて問題ないことが多いです。その消失時期には個人差もあり焦る必要は全くありません。ただしお子さん本人にとっても親御さんにとっても、恥ずかしくて相談できない悩みであることも少なくありません。おねしょは本人はわざと漏らしている訳ではないので、決して怒らないであげてください。(洗濯物が増えてついイライラしてしまうのも十分理解できます)また、頑張っていれば励ましてあげましょう。怒らず、焦らず、でお願いします。

当院ではお子さんのおねしょに対して適切な治療を適切なタイミングでご提案できることからご相談を頂ければと思います。お子さん成長を見守りながら、「おねしょは治る」と本人に自覚させ一緒に前向きに取り組んでいきましょう。

記事執筆者
桃園 宏之
  • 日本泌尿器科学会 指導医
  • 日本泌尿器科学会 専門医
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