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性器脱(骨盤臓器脱)

女性は出産もしくは女性ホルモンの影響でその環境が一生のうちに大きく変化します。骨盤はその中央にある穴を周りの多くの筋肉や靭帯が取り囲み構成されています。これらが主に加齢を含む色々な要因で脆弱になり、骨盤の中にある臓器が下がり膣を押し出し飛び出た状態を性器脱といいます。脱出している臓器によって、尿道下垂、膀胱瘤、子宮脱(下垂)、直腸瘤などに分かれます。

1. 疫学について

性器脱の患者数データなど日本では詳細なものはないようですが、海外では罹患率が女性全体の約30%と非常に多いです。ただし人種差がありアジア人より白人に発生率が高いとされます。性器脱の最大リスク因子は出産で、経腟分娩、巨大児分娩、多産婦などもリスク因子になります。その他には子宮摘出の既往や肥満、便秘、加齢もそのリスク因子になります。

2. 症状について

性器脱には多くの症状があります。症状としては何かが出ているとゆう脱出感、下垂による不快感、痛みや出血など自覚するものから、性器脱に伴うおしっこが出しにくいなどの排尿機能障害、大便の出しにくい排便機能障害、性機能障害などの機能障害があります。またこれらは横に寝ている状態(臥位)もしくは座位では消失しているが、立つと悪くなることから、どこに行くにも憂鬱になり外出を制限してしまう、掃除や炊事の日常生活にも支障をきたしQOLの低下をもたらすとされています。

3. 診断について

診察台にてお産のような形で寝てもらい(砕石位)、お腹に力を入れてもらい実際に下垂してくるか確認します。もしくは咳をしてもらうこともありますが、特に痛みを伴うことのない視診のみで診察可能です。

4. 治療について

手術による外科的治療(手術療法)が唯一の根本的治療にはなります。

①保存療法

容易に自力で手で戻すことができる場合は手術の必要がないことが多く、骨盤底筋運動やダイエットで肥満の改善などをおすすめします。また手術リスクが高い場合はリングが使用されることもありますが、リングは長期使用により炎症や出血、膣粘膜の機械的な障害なとが避けられないので可能であれば就寝時は自己脱着なども行ってもらいます。

②手術療法

性器脱に対するメッシュ手術が代表的な術式です。腟からメッシュを使用し、臓器をハンモック状に支えて治療する手術で、経腟メッシュ手術(TVM)と呼ばれます。ただしコントロール不良の糖尿病やステロイド長期使用中の方は感染のリスクからメッシュを使用しにくいこともあり症例に応じた判断が必要で、その場合はメッシュを使用しない従来から行われてきた経腟手術もあります。経腟子宮全摘+膣形成術や膣閉鎖術などです。前者は膀胱瘤や直腸瘤には効果が乏しいことや膣下垂再発リスクもあります。後者は膀胱瘤や直腸瘤も有効で可能ならば子宮も摘出します。またお腹からアプローチする方法もあり開腹ではなく腹腔鏡を用いて仙骨膣固定術なども比較的若い方には最近は行われています。経腟手術よりは時間がかかるデメリットもありますが、メッシュの露出も少なく性交も可能と言われています。

いずれの手術を選択するにせよ、性器脱の手術は泌尿器科および婦人科との境界領域(どちらが行うこともある)になり、どこの病院でも行っている訳ではありません。性器脱の診断が当院でついた患者様は、性器脱手術を多数行っている施設に責任を持ってご紹介させて頂くのでご安心ください。

記事執筆者
桃園 宏之
  • 日本泌尿器科学会 指導医
  • 日本泌尿器科学会 専門医
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