停留精巣
精巣は陰嚢の中に左右1つずつ認めるのが正常ですが、実はもともと陰嚢内にあったわけではありません。お母さんのお腹にいる胎児期には精巣は腹腔内に存在し、胎生30週以降に鼠径部を通り陰嚢内まで下降してきます。生まれたときにその下降が不十分で陰嚢内に精巣を触れない状態を停留精巣といいます。新生児では5%前後、1歳時で1%程の発生があるとされています。また2500g未満の低出生体重児では20~30%ほどの発生頻度とされていますが、その子たちの1歳児になる頃には満期産児と比較し停留精巣の頻度は変わらないとされています。
1. 原因について
精巣を陰嚢内に導く精巣導帯の牽引作用不足や、腹腔内圧異常、精巣付属組織の発育異常、内分泌異常など様々な要因によって生理的な精巣の自然下降が障害された場合に停留精巣が生じます。
2. 分類について
本来の下降経路途中で停留している部位により、腹腔内精巣、鼠径管内精巣、鼠径管外精巣に分類されます。その他にも本来の下降経路より外れた会陰部や大腿部に位置する異所性精巣、精巣挙筋の過剰な反射によって陰嚢から鼠径部まで挙上と下降を繰り返す移動性精巣、一度は陰嚢内にあったのに再上昇し下降不可能になった挙上精巣もあります。
3. 治療について
停留精巣をそのまま放置してしまうと高率に精子を造る機能の低下がみられてしまいます。そのために治療の主眼は妊孕機能の確保になります。とはいえ停留精巣の組織学的な検索からは乳児期ではその組織異常は認めず、生後18ヶ月から2歳以降には精巣組織の萎縮を認められています。さらに生後4ヶ月までは停留精巣の自然下降が十分に期待できることから、生後10ヶ月から2歳が精巣固定術の実施至適時期といわれています。精巣固定術とは鼠径部に切開をおいて、精巣およびそこに栄養する結果や神経の束(精索)をみつけ、陰嚢内に精巣、精巣上体などの付属組織を収容固定する手術になります。また精巣癌の発生が停留精巣では高いと言われていますが固定術後は陰嚢内に精巣があるわけですから、異常をすぐに確認することもでき、実際にはそこに関してはそこまで問題にはならないと言われています。
子どものおちんちん、きんたまの病気はまずは小児科で相談することも多いと思いますが、そこに関しての専門家は当然、泌尿器科医になります。結局は小児科の先生から泌尿器科に紹介されることも多いです。決して放置していい状態ではなく、早期(2歳まで!)に診断、治療が必要ですので、お母さん、お父さんが気づいた時点で直接、泌尿器科医に相談頂ければ、よりスムーズかと思いますのでなんなりとご相談ください!