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腎盂尿管がん

腎盂〜尿管とは腎実質で作られた尿の通り道である尿路で下部では膀胱に繋がります。この腎盂と尿管にできるがんを腎盂•尿管がんといいます。腎盂•尿管がんは比較的稀な疾患で膀胱がんを含めた全尿路悪性腫瘍のおよそ5%程度とされ、尿管がんが腎盂がんの1/4とされています。膀胱がんと同様にその組織は大半が尿路上皮がんを占め、その他にも扁平上皮がんや腺がん、小細胞がんなどもごく稀に認めます。それでは腎盂•尿管がんについて詳細を述べていきます。

1. 原因について

喫煙は最も重要な危険因子であり喫煙者は非喫煙者に比べて3倍の腎盂•尿管がんの発症リスクを有し、過去に喫煙歴を有する人も非喫煙者に比べて2倍のリスクと言われています。その他にも化学発癌物質や尿管結石などの尿路閉塞に伴う慢性炎症が発症に関わるとされており慢性炎症により生じるがんの組織は尿路上皮ではなく扁平上皮がんと関連する場合が多いです。

2. 症状について

8割近くに肉眼的血尿が認められ3割程度に側腹部痛があります。側腹部に痛みを感じる理由は、腫瘍が尿管内に増殖し、尿管の内腔が狭窄し、おしっこの流れが滞りその内圧が上昇することや、腫瘍の壊死組織や出血した血液の塊が尿管内に詰まり、水腎症が生じることで起きます。また無症状でも他の疾患の検査中にCT等で偶然に見つかることも15%ほどあります。

3. 診断について

逆行性腎盂造影といって膀胱からカテーテルを尿管内に挿入し、そこから腫瘍が疑われる側の尿を採取し(分腎尿といいます)そこにがん細胞が存在しないか確認し(尿細胞診)、またカテーテルから造影剤により腫瘍の局在を確認(腫瘍部位は造影剤が染まらずに欠損像として確認できます)することが目的です。またCT検査腎盂がんは腎盂に腫瘤形成を認め造影で弱い増強効果を認めるので典型例では比較的診断が容易です。尿管がんは尿管内腫瘤、尿管壁肥厚、造影効果増強などこちらも典型的な所見を呈します。また尿路は膀胱まで一連の繋がりであるために膀胱がんを併発する頻度も高く膀胱鏡検査も行うことが必須です。組織学的な確定診断には尿管鏡を用いて尿管鏡下生検を行うことになりますが、これは部分麻酔をかけて手術室で行う検査になります。この検査での癌の異型度の正誤率は8割くらいと高いのですが、深達度評価には限界があります。

4. 治療について

他の泌尿器がんと同様に転移がなければ手術療法が標準治療になります。腎盂がんであろうと尿管がんであろうと、腎盂尿管全摘術が標準術式です。腎摘除術のみでは残存した尿管あるいは尿管口(膀胱に開口する出口のこと)に高頻度の再発が認めることがあるからです。また腫瘍側の尿管口周囲の膀胱粘膜を含んだ膀胱の部分切除も行うことが多いです。手術の方法は開腹、腹腔鏡下手術、ロボット支援手術と選択できますが、腹腔鏡でもロボット支援下手術でも腎摘除を鏡視下で行ったのちに、下部尿管切除、膀胱部分切除は開腹で施行する腎尿管全摘術が広く行われています。腎臓が一つしかない場合や両側に発生した尿管癌に対して腎を温存するために経尿道的に尿管鏡を用いた腫瘍の蒸散凝固術も行われることもあります。初めから他の臓器に転移していた場合や、術後に再発をしてしまった場合は膀胱がんと全く同様の抗がん剤免疫チェックポイント阻害薬抗体薬物複合体を用いることになります。また膀胱内の再発を高頻度(3〜5割)に認めるのでその際は、経尿道的膀胱腫瘍切除術がその都度必要となります。

記事執筆者
桃園 宏之
  • 日本泌尿器科学会 専門医
  • がん治療認定医
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