シルガード9について
[2025.09.28]
みなさん、こんばんは。ももぞの泌尿器科クリニックの院長、桃園宏之です。当サイトでHPVワクチンの話題について、厚生労働省が9価HPVワクチンを男性にも適応を広げ、正式承認される見通しとお伝えしておりました。とはいえ、まだまだ先かなあと思っていましたが、ブログでこの情報を発信した約1ヶ月後の8月末に、ついに日本においても男性に9価HPVワクチン(シルガード9)が正式に適応承認されました。海外データではHPVウィルスの生涯感染率は女性が84.6%に対して男性は91.3%と推定されています。国内データではシルガード9に含まれる9つのHPV型は95%の尖圭コンジローマから検出されたことも示されています。今回、男性に適応が通った根拠の、国内3相無作為化プラセボ対照二重盲検試験(わかりやすく説明すると、科学的根拠の高いデータを得るための最も信頼性の高い臨床試験のやり方になります)では、シルガード9を3回接種することにより、HPVウィルスの持続感染の予防効果が認められました。また性交経験がある被験者の割合も99%を超えていて、性交経験前が必ずしも必須ではないことも読み取れました。副反応については注射部位の痛みは7割ほど認めますが、それ以外は2割程度の注射部位の腫れ、赤みくらいでした。発熱や頭痛は5%ほどに認めましたがそれはプラセボ(偽薬)と全く差がなかったため、シルガード9による影響はほとんどないかと思われます。このサイトでも何度かお伝えしている通り、世界ではもう何年も前から男性にも普通に接種されています。男女ともに接種が導入されているのは81の国と地域に及びます。また、アメリカ、カナダ、イギリス、オーストラリアなど一部の先進国では男女ともに75%以上の接種率を達成しています。日本だけが先進国で唯一、子宮頚がんの死亡率が減少していないことや、男性自身の肛門がんや尖圭コンジローマの予防のエビデンスも鑑みて、接種をよく検討していただければと思います。当院では男性のみの接種になりますが(任意接種のため、自費になります)、接種可能ですのでご希望の方はお気軽にご相談ください。以上、長々とした説明になってしまいましたが、男性に対するシルガード9の正式承認のお話しでした。