PSA(前立腺がんの腫瘍マーカー)の重要性
みなさん、こんにちは。ももぞの泌尿器科クリニックの桃園宏之です。12月に入り、一気に寒さが増してきました。これからクリスマス、お正月と、子どもの頃ほどではありませんが、それでもやはり心が踊る季節です。みなさまにおかれましても、体調管理にはくれぐれもお気をつけくださいませ。クリスマスといえば、思い返すのは今からちょうど15年前のことです。2009年12月24日、私の親族の一人が前立腺がんのステージ4で、恥骨に骨転移もあると判明しました。当時私は初期研修医で、泌尿器科医を志していたものの、まだまだ専門性は乏しかった頃のことです。
きっかけはPSA検査(血液検査でわかる前立腺がんの腫瘍マーカー)で、当時61歳で初めて受けて高値と指摘され、その後前立腺生検、全身のCT検査で確定診断されました。あんなに暗く悲しく重苦しいクリスマスイブは初めてでした。がん患者やその家族にとって、がんの告知がどれほど辛く悲しいことか身をもって感じた出来事でした。
それでも、PSA検査によって治療に辿り着くことができたのは、不幸中の幸いでもありました。PSA検査については、今よりも認知度が低かったのですが、テレビCM等でも啓蒙されつつある中で、家族(残念ながら医師の私ではありません)が検査を強く勧めたことで本人も決意した経緯がありました。
骨転移があるため、手術は適応外で、放射線治療とホルモン療法で経過を見ていくことになりましたが、治療の甲斐があって今でもPSAは低値でコントロールできており、元気に過ごしています。前立腺がんは、手術をしなくても良好な経過を辿れる場合があるというのが特徴の一つでもあります。でも、本当に手術をしないという治療方針でいいのか、患者本人や家族の立場では色々不安に思うこともあり、セカンドオピニオン外来も利用させていただいたことで、納得して治療を進めていくことができました。
この時、親族の立場で前立腺がんを目の当たりにしたことで、泌尿器科の中でもがん治療を専門にやっていこうと決意するきっかけになりました。
親族としての経験、そして泌尿器科専門医かつがん治療認定医の立場から言えることは、
①男性は50歳を超えたら年に1回PSA検査を受ける
②がんと宣告されて治療方針に迷いがある時は、セカンドオピニオン外来を積極的に活用する
という2点です。
PSA検査については、ご本人が認識するとともに、是非ご家族の皆様からもお声がけいただきたいと切に願います。この年末年始の帰省のタイミングを利用して、ご家族で話し合っていただけたらと思います。大切なご家族を悲しませないために、血液検査を年に1回受けるだけで、助かる命があるということを重く受け止めていただきたいです。
そして、万が一がんに罹ってしまい、診断結果や治療方針に不安や迷いがある場合は、遠慮せずにセカンドオピニオン外来を利用してください。当院においても、泌尿器科専門医・指導医、がん治療認定医として、前立腺がんだけでなく、その他の泌尿器科がん(膀胱がん、腎がん、腎盂尿管がん、精巣がん等)のご相談に乗りますので、是非気兼ねなくお越しください。