メニュー

採血検査

健康診断や病院受診の際に行う採血は、ほとんどの皆さん経験あると思います。細い針で採取するにも関わらず、無痛とはいえずチクッとする程度ですが、そこまで気のいいものではありませんよね。しかしそのチクッに一瞬だけ耐えれば、体中のあらゆる臓器の異常を感知することができ、やはり必要に応じて行う必要のある検査です。検査項目について、ここで全てを説明するのは現実的ではないので、泌尿器科診療に関連する項目に絞って説明していきます。

1.腎機能検査

血清クレアチニン

クレアチニンは腎臓で、ろ過され尿中に排泄される物質で、その腎臓のろ過する力をよく表します。この値は食事などの影響を受けず安定した値が出ます。腎不全状態になると著明な上昇を来たし、検査結果でHを示します。しかし筋肉でクレアチニンは産生されるので、筋肉量が多い人は腎機能が正常でも高い値を示すことがあり、逆に高齢者や妊婦などで低い値を示す傾向にあります。

尿素窒素(BUN)

尿素窒素はタンパク質が体内で分解された後にできる老廃物のことで、大部分が尿中に排泄されます。そのために血液中の尿素窒素値からおよその腎機能を推定することができます。腎機能悪化すると高くなり、検査結果でHとなりますが、腎機能以外にも高度の脱水や消化管出血、組織崩壊などでも高い値を示すのでその評価には注意が必要です。

2.炎症マーカー

CRPが代表的なマーカーです。体内に何らかの炎症があれば上昇し検査結果でHを示すタンパク質の一つです。炎症の原因は様々で、泌尿器科で一番多いのは尿路感染症を始めとする細菌感染による上昇で、ウィルス感染時には細菌に比べてそこまで上昇しません。治療前の診断にも用いますが、治療効果を判定する際や経過をみる際にも用います。

3.電解質

体内のミネラルで代表的なものにナトリウム、カリウム、カルシウムがあります。ナトリウムは塩(塩化ナトリウム)に含まれるものですが塩以外にも多くの食品に含まれます。そのため塩だけでなく食事がとれなければ低値を示し、一方で高度の脱水などで濃縮されれば高値を示します。高すぎても低すぎても倦怠感や頭痛などをきたし、重度になれば意識障害に陥ることもあります。カリウムは野菜や果物に多く含まれるミネラルで摂取不足により低くなり、脱力や筋力低下、重度になると麻痺や不整脈も引き起こします。一方でカリウムは腎臓から尿中に排泄されるので、腎の機能が低下すると体内に貯まりやすくなり高値を示します。高くなっても低い場合と同様に吐き気や脱力感、不整脈を引き起こします。カルシウムは馴染みが一番あるかと思いますが、乳製品や大豆製品、小魚などに多く含まれ体内の骨を丈夫に支えるために必要な栄養素です。カルシウムは骨を支えるだけでなく、実は心臓のポンプ機能や神経の伝達などにも関わっています。そのためにこちらも他のミネラル同様に高すぎても低すぎても倦怠感や意識障害、けいれんなど様々な症状を引き起こします。

4.腫瘍マーカー(PSA)

前立腺から分泌されるタンパク質で詳しくはPSA高値を指摘のページをご確認ください。前立腺癌では血中のPSA濃度が上昇するために、前立腺癌のがん検診に広く用いられる検査になります。基準値は4ng/mlとされていますが、年齢や前立腺の容積にもよるので4以上がイコール前立腺癌とはならないので注意が必要です。

PSA高値を指摘された

5.内分泌機能検査

当院で内分泌機能(ホルモン)を測定する場合は多くは男性更年期障害を疑った際です。男性更年期のページと合わせてお読み頂くとより理解が深まると思います。男性ホルモンである総テストステロンの値は250ng/dl以上が正常ですが、実際に体に作用する力を有する遊離テストステロンも確認が必要で、その正常値は7.5pg/ml以上とされています。また男性ホルモンは精巣で生成されますが、それを指令するのはさらに上流の、脳(脳下垂体)になります。すなわち、下垂体に異常があればそこから分泌されるホルモンが異常になり、精巣にも影響することになります。そのために男性ホルモン(テストステロン)が低い場合は、上流にも異常がないか確認する必要があり、そのマーカーがLHとFSHになります。中枢性(脳)に問題がある場合は低い値を示し、精巣自体に問題がある場合はそのLHとFSHは高値を示し、精巣に頑張って働くように指令を与えます。実際の臨床で遭遇する男性更年期障害はLHとFSHは正常範囲内でストレスなどでテストステロンのみが低いことが多いです。

男性更年期障害

その他にも当院での採血で血液を構成する白血球、赤血球、血小板の数や大きさを測定することや、上述の腎機能だけでなく肝機能や脂質代謝異常なども確認することが可能です。梅毒検査においてもTP(梅毒トレポネーマ抗体)とRPRという2つの抗体検査の結果をみて診断を行います。

記事執筆者
桃園 宏之
  • 日本泌尿器科学会 指導医
  • 日本泌尿器科学会 専門医
▲ ページのトップに戻る

Close

HOME